返したいのに返せず、奨学金破産
もともとは「困っている人を助けるため」だったはずの奨学金が、いま「生きる希望がなくなるほど困窮する人」を生んでいます。
たとえば、NHKのクローズアップ現代で取り上げられた29歳・美香さん。母子家庭で育ち、高校と大学に行くために奨学金を借りました。その額、約600万円。昼間は働いて家計を支えながら夜間に通学。そうした苦労の末に卒業したものの、やっと就職できた先は、非正規の保育士の仕事でした。給与は平均月14万円。
家賃をはじめ、食費や光熱費を支払うと、手元に残るのはわずか6,000円。そこに奨学金の返済、月5万円がのしかかりました。払えるはずもなく、貯金通帳の残高は330円となり、いよいよ自己破産に追い込まれます。結婚を考えていた男性とも別れました。

家族も共倒れにする奨学金破産
同じ番組での別の例です。62歳の吉男さん。子供4人を育て上げたものの、離婚し、現在は一人暮らし。老後に備えるため中古のマンションをローンで購入した直後、手元に一通の督促状が届きます。次男が自己破産し、返済できなかった奨学金の督促状。父親である吉男さんが、連帯保証人になっていたのです。返済すべき額は850万円。分割してもとても無理な額に、吉男さんも自己破産。
そこで終わらず、請求は吉男さんと同じく連帯保証人となっていた元妻に回ります。しかし、専業主婦の元妻も自己破産しか、選べる道はありませんでした。そもそもの発端である次男は、決して放蕩者なわけではなく、きちんと大学院まで卒業しました。しかし、非正規のカウンセラーになったところ、収入が少なく、支払えなくなったのです。